下川は迷っていた。 周囲では悲鳴のような被害報告が続いている。 「東3戦線崩壊!」 「鈴木混対部隊壊滅! 行列を維持できません」 「人が多すぎて地面が黒く見えない。 いいか、人が七分に地面が三分。人が七分に三分地面だ」 被害状況は手に取るように判るのだが、こちらの指令は届かない。 高橋の巧妙とも言える指示系統編成である。 大本営を孤立させリーフの敗北する様を見せつけながら何も手を出すことができない。 身悶えする下川を嘲笑する高橋の悪意による編成であった。 だが、下川に全く対策がなかったわけではない。 直属の親衛隊が五千。下川の命令を待っていた。 彼らは麻雀の頃からリーフに忠誠を尽くしたいわば精鋭中の精鋭。 リーフが彼らを裏切ることがあっても、彼らがリーフを裏切ることはない。 この混沌とする戦場に置いて彼らの組織だった行動力は勝敗の帰趨にかなりの影響をもたらすだろう。 しかし、それだけに投入する時機を誤ってはならない。 無駄に彼らを消耗してしまっては今後の販売戦略にも損害が出てくるだろう。 だから下川は迷っていた。 戦場では常に誤謬と逡巡はつきまとう。瞬時の判断が勝敗を分けるのである。 無駄に迷っていては好機をつかめない。 「専務、ご采配を」 それでも下川は動かなかった。いや、動けなかった。次を読む
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