下川は一つ、溜息を付いた。 長い旅の疲れが体中にわだかまっている。 リーフ本社ビル。部屋の中には誰もいない。 誰もいなくなったのだ。 「これでよかったのだろうか」 それは禁断の問い。答えを出してはいけない禁断の問い。 リーフは覇道を征く。そう決断し、進んできた。 前だけを見て。 ついてこれない者は振り落とし、邪魔する者は蹴散らし、いかなる手段を使ってでも頂点を目指しひたすらに走ってきた。 その結果がこれだ。 孤独。周りには誰もいない。 下川は机の上の写真立てを手に取る。 それは五年前、「雫」発売直前の集合写真であった。 下川を中心として、高橋が、折戸が、水無月が、鳥のが、一一が、ら〜YOUが、屈託のない笑みを浮かべて肩を並べている。 あの頃は厳しかった。足りない予算。迫る納期。ただ、良い物を作り、それが受け入れられれば上をとれると信じていたあの頃。 でも楽しかった。 だが今は。 「孤独だ」 そしてこれが覇道を征くと言うこと。 覇者に後ろを振り返ることは許されない。 「だが、一人は寂しすぎる…」 下川は机に突っ伏す。 頂点を極めんとして、道を失った漢がここにひとり。 その哭(こえ)を聴く者はいない。 彼はまだ足下を崩そうとする陰謀にまだ気が付いていなかった。 気付くはずもなかった。 前しか視ていないのだから。次を読む
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