「そろそろ、手打たへん?」 「嫌よ! 今更、頭下げられるわけないじゃない!」 大阪市内某所、某ファミレス。 一組の男女が、何やら議論をしている。 女は、樋上いたる。 男は、YET11ことタクティクスの吉沢務。 かつての、同僚である。 「やけどな、関西のメーカー同士で争ってたって、何も生み出さへんで。 それは、わしらにとっても、ユーザーにとっても、ええことちゃうやろ」 「……それは、分かってる。でも、私たちの受けた苦しみは? あの事件でつぶされた面子は?未だに復帰できない折戸君は? ウィルスに蝕まれた私たちの作品は? それを、誰が償ってくれるの?」 そう言って唇をかむ樋上。 テーブルの上のコーヒーは既に空になっていた。 長い時間が経った後、吉沢が席を立つ。 「まあ、すぐに分かってくれとは言わん。でも、わしはあきらめんよ。 今日は呼び出してすまんかった。ここは払っとくわ」 大阪・中津。 ネクストン本社。 「ふー。ただいま」 「あ、どうでした?」 帰社した吉澤に対応したのは、原画家の娘太丸。 「あかんね。むこうも意地になっとるわ」 「そうですか。あきませんか……」 「リーフさんのほうも、色よい返事もらえんかったしね……」 「……厳しいですね」 沈黙。 ふと、社長室の方から、低く唸るような声が聞こえる。 「樋上いたるーーー。七代祟ってーー、許すまじーー」ガツン 「折戸伸治ーー。七代祟ってーー、許すまじーー」ガツン 「麻枝准ーー。七代祟ってーー、許すまじーー」ガツン 「久弥直樹ーー。七代祟ってーー、許すまじーー」ガツン ・ ・ ・ 「今日も社長、やってますね」 「ああ、もう丑三つ時やね。そろそろ開発に戻らんと」 ふと、時計を見ると、午前2時半。 「はい。しかし、関西に、いえ、この業界に平和が戻るんは、いつなんでしょうね」 口を開く娘太丸。 吉澤は、悲しげな顔をして返した。 「もしかして、争う定めなんかも知れんな……。でもな、あきらめんよ。わしらのた めにも、ユーザーのためにも……」次を読む
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