青紫の背筋に悪寒が走った。自分を睨みつける宇陀児の目。 そのどんよりと濁った虚ろな目を見た瞬間、全身を恐怖が走りぬけた。 (こいつは…こいつは人間じゃない!!何か別のものだ…) 人を人足らせているものが、人間としての精神だとしたら、 青紫の感じた直感はまさに正しい物であっただろう。 「ウゴオオオオオオオオオオオオオオ!」 突如不気味な叫びを上げ、宇陀児が青紫に飛びかかった。 そのまま青紫を地面に突き飛ばし、その身体の上に上乗りになる。 「グオオオオ!」 宇陀児は拳を固めると、青紫の頭といわず、鼻といわず、肩といわず、 ハンマーを振り下ろす様に無茶苦茶に殴りつけた。 青紫の顔が真っ赤に歪み、拳の上げ下ろしに合わせて血糊が宙を飛ぶ。 まさに狂人の馬鹿力。宇陀児はこのままでは青紫を殺しかねなかった。 「青紫!止めろ宇陀児!!」 青紫を助けようと飛び出そうとした、高橋の腕を強く掴んだのは下川だった。 「下川専務!?何を考えている!!」 下川は高橋の腕を掴んだまま、厭らしい笑みを浮かべた。 「考えてみろよ高橋。青紫は盗作疑惑でもう使い物にはならない。 このままleafにいても、ただマイナスの要素になるだけだ。 宇陀児は精神病院を脱走した狂人。精神異常者ということで、 青紫を殴り殺しても、罪となることは無いばかりか、表ざたにも ならない。青紫は不幸な事故でなくなり、宇陀児は病院に 逆戻りする。完璧なシナリオじゃないか? なあに、病院の中でもシナリオは書けるさ」 「下川…」 「なんだよ高橋、そんな怖い顔して。それに専務を呼び捨て…ぐほぉ!」 高橋は空いてる腕で下川の醜い膨れ面を殴りつけた。 そのまま下川を振りほどくと、青紫のところに駆けつけ、 青紫をまるで杭打ち機のように殴りつける宇陀児の首に注射器の針を入れる。 「ア…ガ…?」 宇陀児は血みどろの拳を振り上げ…そのまま、倒れこんだ。 「大丈夫か青紫!!しっかりしろ!!」 高橋は血まみれの青紫を抱き起こす。だが青紫はブルブルと痙攣し、 その目は白く濁っていた。 「クソッ!!なんでこんなことに!」 高橋が呪詛の言葉を吐いた瞬間、突如、頭の中で爆発が起こった。 (ぐあ…頭が…後ろから殴られた…奴…奴め…クソォ……) 後頭部から押し寄せる、激痛と空白が高橋の意識を押し流していった。 最後に聞こえたのは下川の笑い声。 耳障りな忌まわしき哄笑を聞きながら高橋の意識は途絶えた。次を読む
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