[PR]看護師の好条件な求人情報満載:年間50000人の看護師が転職に利用!

■狂気編■〜leaf vs key リレー仮想戦記 ■狂気編■

「分かったぞ」 
 部下に青紫の行方を調査させていた下川が叫んだ。 
「どこだ?」 
 眠気まなこを擦りながら、高橋が視線を専務に転じた。 
 彼はここ数日、青紫の行きそうな場所に網を張り、 
 睡魔と闘いながら、雑多な報告を整理していたのだ。 
 携帯電話を握り締めながら、下川が唇を噛む。 
「岩手……青紫の実家だ」 
「そうか、俺は飛行機を手配する。お前は実家に連絡して、青紫の所在を確かめてくれ」 
 下川は社員名簿をめくり、青紫の実家の番号をダイヤルする。 
 彼の母と思われる女性が電話口に出た。 
 事情を説明したが、青紫は帰ってきていない、 
 それどころか、連絡ひとつよこしていないという。 
 期待を裏切られ、苛立ち気味に電話を切ると、高橋が駆け寄ってくる。 
「タクシーを呼んだ。空港に急ぐぞ」 
 下川が財布の中身を確かめ、高橋と共にエレベーターに向かうと、 
 弱々しい声が彼らの足を止めた。 
「マテ……ボクモイク……」 
 聞き慣れた響きに、二人は戦慄を覚えた。 
「ボクハウラギリモノヲユルサナイ……ゼッタイニ……」 
 精神病院に強制送還されたはずの宇陀児が、 
 刃のような光を瞳に揺らめかせながら、狂気に満ちた視線で二人を射抜いた。 

 下川はつばを飲み込み、懸命に声帯を震わす。 
「宇陀児、おまえ、どうして?」 
「イッタダロウ……ウラギリモノハユルサナイト……アオムラサキヲ……」 
 宇陀児はそこまで言ったところで白目をむき、全身をけいれんさせた。 
 続いて口から白い泡を吹き、無秩序なステップを踏み始めた。 
 頭と手足は不規則な軌跡を描き、豊かな髪が激しく乱舞する。 
「オレハテンサイ……ソウ……テンサイダ…… 
 リーフハオレノモノ……リーフヘノウラギリハオレヘノウラギリ……」 
 これは精神分裂病に特有な症状だなと、高橋は思った。 
 自我が肥大化し、現実と妄想の区別がつかない。 
 アイデンティティが混乱し、過度の被害妄想に捕らわれる。 
 強迫観念、離人症、果ては解離性障害……。 
 この男とは、早いうちに手を切らなければいけない 
 ――もっとも、精神病院に隔離されていた宇陀児を解放したのは、当の高橋なのだが。 
 しかし、ここで逆らってしまえば、どんな奇行に走るか分からない。 
 宇陀児の周囲には、凶器となりうるものが散乱している。 
 デスク上に無造作に置かれたナイフ、給湯室のまな板に投げ捨てられたままの包丁。 
 昔から言うではないか、キチガイに刃物、と。 
 宇陀児を第二のネオ麦茶にしてはならない。 
 下川に視線を送ると、彼もそう考えたらしく、黙ってうなずいた。 
 下川と高橋は仕方なく、よだれを滝のように流し、 
 恍惚を極めたかのような表情を浮かべる宇陀児に肩を貸すと、 
 タクシーに乗り込み、空港に向かった。 
次を読む
前を読む
目次に戻る

TOP


[PR]2歳からの子育てサポート教材:月々660円で1ヶ月分からお試しOK!