「久しぶりだね、甘露君」 イベントを翌日に控え、 少し早めに帰途についた甘露は、 街角でよく見知った男性から声を掛けられた。 年は40代前半。風采の上がらない、どこにでもいそうな男。 だが、彼こそがアーベルの菅野と並び称されるもう一人の英雄、 エルフの蛭田昌人、その人だった。 甘露と同じF&Cスピンアウト組ということもあり、 面識も全くないわけではない。 だが…こんなところで会うのは、あまりにも不自然だった。 「何か…ご用ですか?」 「用も何も…君に会いたくてね」 「なぜ、僕なんかに…」 「君が欲しい」 「ひ、蛭田さん、僕にはそういう趣味は」 「何を勘違いしているんだね、君は。 変わらないな、そういう純真なところは」 「は、はぁ」 バツが悪いのか、甘露は少し顔を赤らめた。 ちなみに、筆者はやおいが書けないので、 これ以上は余計な心配だったりするが…。 「欲しいのは君の絵だよ、甘露君」 「蛭田…さん?」 「あんな生意気な女と一緒に働くのも…正直疲れただろう」 「…」 甘露は答えない。 「どうだね? エルフで原画を描いてみないかね?」 躊躇なく、蛭田ははっきりとそう言った。 しばらくの沈黙の後、甘露は答えた。 「…お断りします。僕たちにはまだ、仕事が残っています」 「…ま、急ぎはしない。答えはいつでもいい」 蛭田の顔に落胆はなかった。 「私は気が長い方でね、欲しい人材は気長に待つのさ。 菅野の泥棒ネコと違ってね」 「…すいません」 甘露は、そう答えるのが精いっぱいだった。 「次に会う時には、いい答えを期待しているよ。甘露君」 「…はい」 それだけ言って、2人は別れた。 そして、その光景を見ている一人の女性がいた。 「ポチのくせに。むかつく…むかつく…ちょーむかつく!」 みつみ美里、その人だった。 甘露の姿が見えなくなってから、 蛭田はおもむろに携帯電話を取り出した。 「私だ。…社長を頼む」 数刻あって、蛭田はおもむろに口を開く 「いい話をありがとう、あきら君」 『いえいえ、社長こそ、相変わらずお口のうまい』 電話の相手は、ちぇりーそふとのあきらだった。 『彼に野心を持たせるためには、あなたの力が必要なのです』 「菅野のような必要以上の野心は、私にとっては毒だがな。 まぁ、彼の場合は野心を持つくらいで十分だ それにあきら、私はもう社長ではない」 『これは失礼…。それにしても、まさかあなたが協力してくれるとは…』 「協力…かどうかは判らんがな。…もっとも池袋には、 菅(宗光、ビ・ヨンドのシナリオ)を引き抜かれた恨みはあるが」 『なるほど…あなたもあそこには恨みが…』 「いや、それとは話が別だ。 私は彼が欲しい。あんな絵描きはめったにいない…」 電話を握る蛭田の目は、熱病に冒されたかのようだった。次を読む
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