
「もしもし・・・、駄目だ繋がりやしないっ!」 高田馬場駅前、公衆電話を焦ったように切って 一人の男が電話ボックスから飛び出す。 話す内容が内容だ、会社からは絶対に電話をかける事が出来ない。 ましてや、猜疑心の増している現状では会社の電話に盗聴機が仕掛 けてあったとしても別段驚かない。 「池袋までは大体30分か・・・」 財布の中の小銭を確かめて、彼は山手線の改札へ駆け込んだ。 しかし、その行く先を見慣れた人影が阻んだ。 「師匠にご注進か?橋本・・・、お前も裏切るのか?」 楽しそうに、あるいは悲しそうに語りかけた男の名は江森美沙樹。 「そんなっ!でも僕はあの事だけは回避しなければならないと思ったから・・・」 池袋へ・・・リーフ東京開発室にいる師匠ことなかむらたけしへ 重大な危機を伝える為に行こうとした人物の名は橋本タカシ。 共に現 F&Cを支える原画家である。 「橋本・・・分かっているだろう?馬鹿な争いをしている業界をおさめる為には あの計画が必要だという事を」 「違う!あの計画はそんな綺麗な物じゃない。裏切りへの復讐、簒奪の為の手 段、権力を求める悪魔の計画だ!」 人目もはばからず叫ぶ。 たとえそれが自らの会社でも・・・いや、内情を知って いるからこそ阻止せねばならなかった。 F&Cが次期ソフ倫理事を獲得する計画「島企画」・・・外部にばれぬよう同名の ゲームまで発表してカモフラージュした計画は すでに最終段階へ進行していた。 乱立する新興ソフトメーカーのソフト発売に合わせてブランド力で優るF&Cが 作品をぶつける。それにより受注が減少し苦境に陥った 新興メーカーにささやくのだ 「次期理事選挙で支持してくれるのならば助けてやろう」 この計画資金は洪水のように販売されるキャラグッズがまかなっていた。 デジフェスでの一件でも冷ややかに騒ぎを眺めていたのはコップの中で争うKeyや リーフの愚かさを嘲笑っていたに他ならない。 ソフ倫さえ押さえてしまえば規制の名の下、いくらでも彼らを縛り付ける事が可 能なのだ。 「暗黒時代の到来だ・・・。それだけは許せない」 「ならば、止めてみろ」 「え!?」 江森の意外な言葉に橋本は驚いた。 「お前の言葉が、下らない争いをしている連中に届くかやってみろ。助けてなど やらん、針玉や外部のたもりさんも巻き込むな。できるか?」 試すような瞳、挑発するような言葉。 「やります。阻止してみます」 挑む視線と決意の言葉。 そして江森に背を向けると改札へ向かって歩き出した。次を読む
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