東京行き新幹線、とあるグリーン個室。 「すぴーっ、すぴーっ」 寝息を立てて眠る女性と、それを見守る二人の男。 「流石に、今日は疲れてますね」 「そりゃあ、『冬』の原稿と、『新作』の原画で忙しいところに、昨日一番であ の『企画書』を仕上げたんだからな」 「そうですね……同人のこととなると、見境がないんですから」 沈黙が、場を支配する。 「CHARMさん」 「なんだ、甘露君」 「……『東京開発室責任者』として、止めないんですか?」 「君だって、分かっているくせに。確かに、リーフにとっちゃワリのいいイベント じゃないさ……だがな、俺たちの手による、俺たちの作品の同人誌即売会だぜ。 『同人屋』としちゃ、願ってもないチャンスじゃないか。残念ながら、俺は『外 人部隊』にはなれても、『サラリーマン』にはなれんようだ。甘露君だって、そ う思ってるんだろう?」 「ええ。俺も、『同人屋』ですから。でなきゃ、そもそもこうして古巣を飛び出す こともなかったでしょうに」 ニヤリと笑う、甘露。 また、沈黙が三人を包む。 沈黙を破ったのは、みつみの寝言だった。 「むにゃむにゃ……あたしは……同人界の……クイーンに……なるんだから……」 思わず顔をほころばせる二人。 鷲見は、缶ビールをあおり、口を開く。 「クイーンか…… なあ、甘露君。俺たちは、これまで同人界のトップを目指して戦ってきた。…… だからこそ今の地位がある」 「ええ」 「だがな……俺は、もっと上、もっと高みが見たいんだ。たとえそれが、一歩間違 えりゃ奈落の底に落ちる道であっても……」 「CHARMさん。俺だって、同じっすよ。いや、みつみ先輩だって、師匠だって、ばん ろだって、よしみだって……同人界のトップに立つことを誓った、あの日から…… トップに立つためなら……」 その先を言いかけて、甘露は口をつぐんだ。 ……たとえ、同志を奈落に蹴落としても!次を読む
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