
「そうですか…アリスが池袋にそんな入れ知恵を…」 東京・練馬の某事務所。その男は、眼鏡の下で眼光を鋭く光らせた。 「アリスにリーフ…。いつまでも…東は西の植民地ではないのですよ」 穏やかな言葉の中にも、鋭さが見え隠れする。 「DESIRE、EVE、YU-NO…。 エロゲーの泣きの元祖が、彼らには誰なのか判っていないようですね」 男の名は菅野ひろゆき。アーベルの社長も務めるこの世界の重鎮だ。 彼を神とあがめるクリエーターは多いが、エルフの蛭田と対立したこともあり、 現在(3月当時)は、表立った活動を控えている。 「高田馬場を骨抜きにした彼らもさることながら、 東のテリトリーにアリスさんが割り込んでくるのなら、こちらにも考えがあります」 「考え…とは、何ですか、社長」 傍らにいた菅野の寵臣、田島直がいぶかしげに聞く。 「天満と連絡を取り合いなさい。敵の敵は味方というではありませんか」 「天満…まさか彼らに」 「彼らはある意味、私の忠実な教え子です。困った時には助けると、そう伝えておきなさい」 「…はい」 「それと」 「…まだ何か?」 「私の西の友人、イシカワに連絡を取りなさい。少しは助けになるでしょう」 「仰せの通りに」 「…ところで田島、探偵紳士の進み具合はどうですか」 「順調です、すべて。前のようなことはありません」 「古巣のような致命的なバグを出すとは…私のプログラムの腕も鈍ったようですね」 「社長も…相変わらずきついことを」 「社長はやめなさい。あなたも社長でしょう、田島」 「…ですね。昔の癖が抜けないものですから」 「後は…任せましたよ。あれには二の矢、三の矢もありますから」 「はい、判りました」 「萌えは…ミントで取りあえずマスターしました。 私もまだ若い。彼らには、負けませんよ」 田島が去った社長室で、菅野は一人つぶやいた。次を読む
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