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■波濤編■〜leaf vs key リレー仮想戦記 ■波濤編■

大阪市内、某所。 

「……いかんな」 
デスクに腰掛けた男が、一人呟く。 
「どうしました、部長?」 
答えたのは、隣で作業をしていた部下。 
「いや、キミも知っているだろうが、デジフェスの件」 
「Keyさんのコトですか」 
「そう。会場外だったからよかったものの、中だったら我々にも被害が…… 
と、それはともかく、やっぱり黒幕がいたようでね」 
「リーフさん、ですね」 
「そうゆうこと。『Kanon』の評価が高かったから、焦っているんだろうね。僕としては3−0で『こみパ』だけどね」 
「……メガネっ娘の数でですか?」 
男は、「ごほん」と咳払いして、話題をそらすように続ける。 
「しかし、だ。これだけ派手なコトされると、我々としても黙ってみているわけには行かないねえ。関西の覇権は、リーフさんでも、Keyさんでもなく、我々が握るべきだからね」 
「ええ」 
「そこで、だ。すまないが、池袋に電話をつなげてくれないかな」


所変わって、伊丹・リーフ本社ビル。 
殲滅作戦が快調に進んでいるからか、開発室には穏やかな空気が流れている。 
「順調だな」 
下川が口を開く。 
「ああ。このまま行けば、あの目の上のたんこぶは消滅。我々の帝国は安泰だな」 
そう語る高橋の表情は明るい。 
「うむ。だが、こう言うときこそ気を引き締めねばならんかもな」 

どたどたどた。 
開発室に一人のスタッフが駆け込んで来る。 
「どうした。そんなに慌てて」 
「た、大変です。と、東京から、『彼女』がこちらに向かっていると、連絡が……」 

開発室に、戦慄が走る。 

JR新大阪駅、新幹線ホーム。 
下川をはじめ、リーフ主要スタッフがそこに集結していた。 

新幹線のドアが開く。 
グリーン車の中から出てきたのは、二人の男を従えた、女性だった。 
女性は居並ぶリーフスタッフを睥睨し、口を開く。 
「やっほ〜♪ したぼくのみんな、でむかえごくろ〜☆ 
そ〜れにしても、やっぱこれくらいいないとね。『クイーン』としては☆」 

賢明なる読者諸氏ならお分かりであろうが、彼女はみつみ美里。 
同人界の『クイーン』にして、リーフ東京開発室の原画家である。 
彼女が引きつれているのは、同じくリーフ東京スタッフの甘露樹、鷲見努。 

再び、リーフ本社ビル。 
専用の社用車を降りた一行は、専務執務室に迎えられた。 

「ふふ〜ん。ちょーすばらしいアイデア思いついたから、やってもらおうと思って♪ このみつみちゃんさま自ら来てあげたんだから、ありがたく思いなさいよ」 
そう言ってみつみが差し出したのは、 
『こみっくパーティー きかく書』 
と書かれた一通のレポートだった。 
「え、あのー、こみっくパーティーはもう既に発売されましたが……」 
「んーなことは分かってるわよ。まあ、ちょっと読んでみて☆」 
下川がページをめくると、そこには 
『しゅし:同人誌そくばい会「こみっくパーティー」をほんとーに開さいする→したぼくたち大よろこび』 
と大書されていた。 

その後には、即売会の詳細として「ゲームで出てきたサークルをはじめ、ごーかゲスト♪」などと景気のよい言葉が並ぶ。 
鳩が豆鉄砲食らったような顔をして固まる下川。 
「どお?いいアイデアでしょ?」 
「み、みつみ先生、これは……」 
「いいでしょ?」 
下川の頭に浮かんだのは、先日のデジフェス。 
ここに書かれている規模の即売会ともなれば、相当の混乱が予想される。 
それだけでも二の足を踏むのに加えて、この機をついてKeyが復讐作戦を打ってこないとも限らない。他の大手だって黙っては居るまい。 
「ちょっと、無理では……」 
絞り出すように声を紡ぐ。 
「やだ」 
にべもなく言いきる、みつみ。 
「しかし……」 
「やだやだやだやだ! やってくんなきゃやだ!」 
「か、勘弁してください〜。こんな企画通したら、どんな危険なことになるか……」 
「……じゃ、いい」 
「分かっていただけましたか」 
ほっと胸をなでおろす下川。 
「……高田馬場に、帰る」 
「待ってくださいみつみ様!! それだけは、どうかご勘弁を…!」 
冗談じゃない。 
彼女が抜けたら、原画もグラフィッカーも全部抜けるだろう。そうなれば、東京開発室が再建できないのは明白である。 
それに、せっかく引き離したF&Cに、塩を送ってやるわけにもいかない。 
「分かりました! 即売会でもなんでも、開きます!」 
「よしよし。そーこなくっちゃ。じゃ、後のこまかいことはよろしく〜♪ 
甘露クン、CHARMクン!」 
「はい」 
後で控えていた男が答える。 
「せっかく大阪来たんだし、プリンパフェ食べにいくわよ〜♪ つれてってあげるから感謝しなさい」 
そういうと、みつみは部屋を出ていった。 
残された二人−甘露と鷲見は苦笑いして顔を見合わせる。 

「甘露君。先行っといてくれないか」 
「ああ」 
甘露が退出すると、鷲見は下川に近づき、一言告げた。 

「南森町に、気をつけて下さい」
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