■序章■〜leaf vs key リレー仮想戦記 ■序章■

 1999年、夏。 
 新ブランドkeyの処女作KANONは、空前のヒットを飛ばした。 
「ゲームで初めて泣きました」 
「最高です。これで泣かないのは人間じゃない」 
「友達に布教してます」 
 考えられる限りの賛辞の言葉が、オフィシャル掲示板を埋め尽くした。 
 一部に否定的な意見はあったものの、それは押し寄せる賞賛の嵐に飲み込まれた。 
 しかし、巧みなシナリオと繊細な音楽、美麗なCGが織りなす感動は、 
 世に言う「鍵っ子」を生み出すことになる。 
 彼らの珍奇な言動は周知のことであり、ここでは触れない。 
 詳細は、後世の歴史家が記述する通りである。 

 ……ONEに続く成功を、業界人とユーザーは感慨深い目で眺めていた。 
「新しい時代の到来だ」 
 彼らは、敬意と嫉妬の溶け合った視線を、6人の英雄に向けた。 
「次回作の結果次第では、トップが入れ替わる」 
 押し寄せる世代交代の波は、緩やかに、しかし確実にエロゲー業界を覆い始めていた。 

 かつて、業界にその名を轟かせた二人のクリエーターがいる。 
 同級生で知られる蛭田と、EVEやYU−NOを世に送り出した剣乃である。 
 洗礼されたシステムとシナリオは、信奉に類する賛辞をもってユーザーに迎えられ、 
 エロゲーの歴史にその名を刻んだ。 
 しかし、彼らの名声も長くは続かなかった。 
 二人を過去の栄光の彼方に葬り去ったのは、ビジュアルノベル三部作の高橋である。 
「マルチ萌え〜」という、あまりにも有名なフレーズから分かるように、 
 高橋は絶大な支持を得、リーフを一躍トップメーカーに押し上げた。 
 その高橋もやがて、罵倒の雨に打たれることになる。 
 ToHeartから数年を経てもなお、彼は、新作に手をつける様子を見せないのだ。 
 憶測を楽しむように、人々は噂した。 
「才能が枯れた」 
「いや、単なる怠慢だ」 
 真相はどうあれ、いまやトップメーカーとしてのリーフの地位は揺るぎなかった。 
 高橋が新作に関わらずとも、支持は衰えず、売上が落ちる気配は見られない。 
 彼は信じていた。 
 ……リーフ帝国の栄光は永遠だ、と。
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